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何かと取材しつくされたような今の時代にも、乗った電車で横に座った、ぐらいの近くにいる普通の人たちの辿った過去、精神的な道のりを取材することには①可能性が残されている。これは幸福な感触だった。普通の人に対して、話題の人物と同じような方法でなる…
何であれ、一個の製品を完璧に仕上げるのに要求される技能は、たいへんなものです。そんな芸当(注1)が可能な職人の数は限られていることでしょう。作り出せる製品の数も、自然と限られてきます。ところが、作業工程を細分化してみますと、個々の工程は意外…
いつでも帰ってこられる場所があると思っていられるのは、ずいぶんと心強いことだと思うんです。別に帰ってこなくてもいい。「帰れるところがある」と思っている人と、そんな場所がない人では、人生の選択肢の数が違う。当たり前ですけれど、「退路のある」人…
科学記者を始めた20年ほど前、記者の訪問を歓迎しない科学者は、けっして珍しくなかった。「新聞記者との付き合いには何のメリットもなく、時間の無駄。記者と親しい科学者は、同僚からうさんくさい目で見られる。真理の探究に没頭する科学者が、記者なんて…
子どもはこれから自分は大人になっていくのだから、自分はどうなるのだろうとそれは一生懸命に大人を観察している。その大人に魅力を感じれば、あんなふうになりたいと思うかもしれない。ほんのちょっとチャーミングなところを認めて、ああ失敗しても、どじ(…
人に従順な飼い犬は、もともとオオカミの仲間を飼い馴らしたものである。(中略) ところが、「人間がオオカミを飼い馴らした」という話には謎が多い。犬が人間と暮らすようになったのは、15000年ほど前の旧石器時代のことであると推測されている。当時…
一日に八時間眠るのが人間社会の決まりごとであるかのように言う人がいる。それには何か特別な根拠があるのか。もともと睡眠は、適応のための技術である。さまざまな身体内部および外部の環境条件に合わせて、脳をうまく休息させ、よりよく活動させるための柔…
ウェブ時代に突入して、私たちの生活には、世界中のありとあらゆる情報が溢れかえることとなった。その量は膨大で、しかも、時間とともに流れ去ることもなく、データとして刻々と蓄えられ続けている。一方で、私たちの毎日はといえば、相も変わらず24時間し…
よく知っている人を相手に自己を語るのは簡単だが、お互いによく知らない相手に自己を語るというのは非常に難しい。 よく知っている相手との間に共通の文脈ができあがっているので、その文脈にふさわしい自分を提示していけばよいから、ほぼ自動化した形で自…
いま私たちの多くは、社会など動かしようがないと考えているのではないでしようか。そして、それを所与(注1)の条件として、どのように行動すればいいかの判断基準を決めているのです。言い換えれば私たちは、「この社会は動かしようがないのだから、それを…
芸術作品が私たちにもたらすものは、感動ばかりではない。驚きとか困惑、ときに不快感やイライラ感だったりする。それまでだれも思いつかなかったような形状や色彩や音は、私たちをさまざまに揺さぶる。私たちは慣れ親しんだ世界に浸っているとき心地よさに包…
日本には昔から「物見遊山」(注1)という言葉がありますが、非日常への憧れは観光の一つの本質です。 しかしその一方で、物見遊山だけに頼った観光地はいずれ必ず飽きられてしまうというのも事実です。例えば富士山を見た外国人が、も…